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スーパーサイエンスハイスクール (SSH) 事業について調べてみた

はじめに

今年度 (令和6年度) 、私が卒業した都立戸山高校スーパーサイエンスハイスクール (SSH) 指定校から外れ、2年間の経過措置へ移ることとなった。同校は2004年に都立高校として初めてのスーパーサイエンスハイスクールの指定を受けた後、途中2年間の経過措置を経て19年間に渡って指定を受けてきた。入学当初から「戸山といえば SSH」の認識であった私からすれば、このことは大きな衝撃であった。

思えば、在学中は SSH の授業内で行っていた研究活動に熱中していたこともあり、あまり SSH 事業そのものに関しての意識が向かなかった。

そこで今回は、文部科学省が行うスーパーサイエンスハイスクール (SSH) 事業について、自分なりに調べてみたことをまとめていこうと思う。自分用のメモも兼ねています。

スーパーサイエンスハイスクール (SSH) 事業とは?

そもそも スーパーサイエンスハイスクール (SSH) (以下、単に SSH とする)とは何なのか?Secure Shell じゃないぞ!

文部科学省が2002年に定めた実施要項によると、 SSH の趣旨は以下のようになっている。

1 趣旨

高等学校及び中高一貫教育校(中等教育学校並びに併設型及び連携型中学校・高等学校をいう。)(以下「高等学校等」という。)における先進的な科学技術、理科・数学教育(以下「理数系教育」という。)を通して,生徒の科学的な探究能力等を培い,もって,将来国際的に活躍し得る科学技術人材等の育成を図ることとする。

SSH実施要項(令和3年11月25日改定) より引用

まあ簡潔に言えば、昨今重要視されている「理数系科目」の教育を重点的に行う学校を SSH 指定校とすることで、生徒の科学的探究力を養い、将来的に社会で活躍できるような人材を育成しようということだ。


SSH 事業の採択を目指す各校は、後述する指定形態のいずれかを選択して、事業実施の希望申請を各都道府県教育委員会等の設置機関経由で文部科学省に事業申請を行い、企画評価会議協力者の審査の下で内定を受けるということになる。

内定後は、科学技術振興機構 (JST) からの資金援助および様々なサポートを受けることができる。

また、高等学校等の理数系の教育課程の改善に資する実証的な資料を得ることも目的の一つであり、 SSH 指定校では学習指導要領の枠を超えた教育課程の編成が可能となる。

ただし、 SSH 指定校を所管する管理機関から次期指定に向けた判断材料としての定期的な監査が行われる。

SSH の指定形態

ひとくちに SSH 指定校といっても実は様々な形態がある。現行制度では、大きく分けて「基礎枠」「文理融合基礎枠」「科学技術人材育成重点枠 (単に「重点枠」とも)」の3つの枠がある。

基礎枠

自然科学を主とする先進的な理数系教育に関する研究開発を実施し、将来のイノベーションの創出を担う科学技術人材の育成を目指す」ことを目的とする。ほとんどの SSH 指定校はこの枠。

1期あたり原則5年間の指定を受けることができ、さらに過去の採択実績によって、「開発型」「実践型」「先導的改革型」に加えて「認定枠」という4つの区分に分けられる。各区分の概要は以下の通り。

開発型

SSH 事業に初めて採択 (Ⅰ期指定) された場合はこの区分に指定される。指定期間は5年間

新規性のある教育課程等の研究開発を一から設定・検証し実施することになる。

実践型

SSH 事業のⅠ期目を終了し、「SSHガイドライン」に照らした審査を通過してⅡ期目~Ⅳ期目の指定を受けた場合はこの区分に指定される。指定期間は5年間

新規の研究仮説の設定は必須ではなく、これまでに開発してきた教育課程等の実践的な研究開発に取り組むことになる。

Ⅳ期目の最終年度に当たる学校、またはⅣ期目の最終年度をすでに終了した学校はこの区分には申請できない


なお、指定Ⅰ~Ⅱ期目の期間を、 SSH 指定校としての取り組み・体制等の実施・確立を行う「創成期」、Ⅲ~Ⅳ期目の期間を、自らの強み・特色を深化・恒常化し域内外に波及する取り組みを確立する「発展期」とも呼んでいる。

先導的改革型

SSH 事業のⅣ期目を終了した上でSSHガイドラインで挙げられた、発展期までに到達していることが望ましい研究開発体制や指導体制などをクリアしていると評価された場合はこの区分に指定される。指定期間は3年間

科学技術人材育成におけるシステム上の課題を自ら設定し、その課題に挑戦する意欲的な研究開発を実施することになる。


この区分に指定された場合は実質Ⅴ期目の指定となるわけだが、この期間を、科学技術人材育成システム改革を先導する「リーディング期」とも呼んでいる。

認定枠

SSH認定枠」は、2021年に行われた「スーパーサイエンスハイスクールSSH)支援事業の今後の方向性等に関する有識者会議」の第二次報告書で新たに創設が発表されたものであり、翌年の2022年度から導入が開始された。この認定枠と区別して、前述の3区分を「事業枠」と呼んでいる。指定期間は5年間

この枠に指定された学校は、科学技術人材育成の全国的なモデルとしてこれまでの研究開発の成果を基にした多様な実践活動を展開・普及することが求められ、事業枠の学校と連携しながら、各指定校が培ってきた特色・強みを生かした取り組みを、積極的な情報発信や視察の受け入れ等を通して広めていくことになる。


事業枠と大きく違うのは、国からの資金提供が行われない点 (国が主催する全国規模のイベントへの参加に係る費用等は除く) だ。これは有識者会議で指摘された「SSH 事業枠終了後の自走化への支援 (後述)」が背景になっていると思われる。

ちなみに2024年度からは、申請年度時にⅢ期以降の経過措置校であり且つ経過措置期間の最終年度である学校に限り、事業枠次期 (Ⅳ期) の申請と同時に認定枠への申請も可能になった。

文理融合基礎枠

2024年度から新たに創設された。「社会の諸課題に対応するため、自然科学の『知』と人文・社会科学の『知』との融合による『総合知』を生み出す先進的な理数系教育に関する研究開発を実施する」ことを目的としている。

より文理横断的な視野からの教育研究開発を行うということだろうか。この枠に関しては、新設された経緯について私が調べた限りではよくわからなかった。


基礎枠と同様に「開発型」「実践型」「先導的改革型」「認定枠」の4つに区分分けした指定がなされている (2024年度は認定枠の該当なし) 。

科学技術人材育成重点枠 (重点枠)

基礎枠及び文理融合基礎枠の取り組みに加え、科学技術人材の育成に係る更なる取り組みを行う場合、希望すれば科学技術人材育成重点枠に応募可能である。審査の上で通過すれば追加支援 (主に財政支援) を国から受けられる。その場合、以下5区分のいずれかの取り組みを行うことになる。なお、指定期間は最長5年間である。

  • 広域連携 : 理数系教育における広域連携の拠点校として、 SSH 指定校としての経験等で培った理数系教育のカリキュラムや指導法、評価法、関係機関とのネットワーク構築手法等を、全国的に他校 (SSH 指定校以外の学校を含む) へ普及し、広く周辺地域全体の理数系教育の質の向上を図る。
  • 海外連携 : 海外における先進的な理数系教育を行う学校や研究機関等との間でオンライン等も活用しながら定常的な連携関係を構築して、国際性の養成を図るのことに加え、将来的に言語や文化の違いを超えて共同で研究活動等を行えるような人材の育成を目指す。
  • 革新共創 : 社会問題・地域課題について、 NPO 法人・企業等との連携や、先端的な科学技術の知見やデータサイエンスの手法等を活用しながら、文理横断的な領域も含めた科学的な課題研究を行うことにより、新たな価値の創造を志向する人材を育成する。
  • 高大接続 : 高校が主体となり、その人材像や身に付けさせる資質・能力について共通理解を形成し、高校段階から大学入試、大学入学後の各段階における科学的な課題研究等を通して一貫した人材育成プロセスを大学と共同で開発・実証することによって、将来のサイエンス、イノベーションを牽引するロールモデルとなるような理数系トップレベル人材を育成する。
  • その他 : 上記4つの区分以外の科学技術人材育成に資する特色ある取り組みを行う。

事業枠の先導的改革期・認定枠に指定された学校でも、すべての重点枠に申請が可能であり、同額の支援を受けられる。


いろいろな指定の形態があって字面だけではわかりにくいので、参考資料から抜粋した図を載せておく。

「DXによる新たな価値創出[10]【寄稿】スーパーサイエンスハイスクールSSH)事業による 理数系人材の育成について/文部科学省 初等中等教育局教育課程課 課長補佐 山本 悟」より

つまりⅢ期目の指定終了後は

  • 引き続きⅣ期目以降の指定を目指す
  • 認定枠への移行 (Ⅳ期目以降も可)

の2つの道が存在するということだ。


また、前年度が SSH 指定期間の最終年度であり、翌年度で事業採択されなかった場合、その学校は申請の上で1~2年間の経過措置期間を認められることがある。つまり、前年度までの入学者に対しては、指定終了後も卒業まで事業が継続されるということである。

直近の SSH 事業規模

SSH 事業の概要を掴んだところで、直近の事業規模について見てみることにする。


2024年度は全国で225校が SSH 指定校となった。各都道府県に最低1校は指定校が存在する状況で、特に首都圏・関西圏が多い

全国の SSH 指定校の分布。

基本は国公立の学校が中心だが、一部私立の学校も見られる。


また、 SSH 事業全体の2024年度の予算額 (案) は23億円。ピーク時には30億円弱が予算として計上されていたことを考えると少し物足りない印象だが、令和に入ってからは20億円前半台の予算が毎年安定して投入されていることになる。

事業枠における指定校に対する支援額は以下の通り。

  • Ⅰ期目1年目 : 1200万円 / 年
  • Ⅰ期目2, 3年目 : 1000万円 / 年
  • Ⅰ期目4年目以降 : 750万円 / 年
  • 先導改革期 : 600万円 / 年

なお、重点枠に対しては年間300 ~ 3000万円の支援額が支給される。

SSH の成果と事例

開始から20年以上が経過した SSH 事業の成果にはどのようなものがあるのだろうか。スーパーサイエンスハイスクール(SSH)支援事業の今後の方向性等に関する有識者会議 第二次報告書においては、次の6項目が挙げられている。

  1. 優れた科学技術人材の輩出
  2. 高等学校における理数系教育に関する教育課程等の改善
  3. 生徒の理数系科目に関する意欲・関心の向上と、進路選択への影響
  4. 生徒の大学院への進学希望率等に与えた影響
  5. 地域教育への波及効果
  6. 大学と高校の先進的な教育との連携・接続

特に 2 については、2022年から順次移行が進んでいる新しい高等学校学習指導要領に、共通教科「理数」に探究的科目である「理数探究基礎」及び「理数探究」が新設されたことが挙げられる。 SSH の特色である「課題探究」の重要性が広く認識された結果だろう。一般の学校の教師・生徒に対する負担は別問題だが...

また 3 については、科学技術コンテスト等に SSH 指定校の多くの生徒が活躍している事実が挙げられる。令和元年度における国際科学オリンピック国内大会の参加者のうちの約 35% 、第10回科学の甲子園全国大会出場者のうち約 4 割が SSH 指定校の生徒である。 SSH 指定校に集まってくる生徒はもともとその方面への関心が高いこともあるかもしれないが、周囲に同じような興味・関心を持つ人 (尖った人?) がたくさんいるという環境に身を置くことで、よい刺激を受けられるということも大きいだろう。


なお、SSH 指定校の各校の取り組みについては、 JSTSSH 事業のサイトから見ることができる。

www.jst.go.jp

SSH 事業の課題

上に述べたように SSH 事業は様々な成果を上げている一方で、いくつかの課題も見られるようになってきた。

令和元年度には SSH 事業が財務省予算執行調査の対象となり、以下のような指摘を受けたようだ。

  • 事業開始から長期間経過しているにもかかわらず、文部科学省において有効な評価方法が確立されていない文部科学省が主体的に、明確な評価基準を示すとともに、各指定校に検証可能な到達目標を立てさせるよう制度を改善していくべきだ。
  • 非指定校や近隣小中学校への成果還元を本事業の採択要件や評価項目として盛り込むなど、各指定校が確実に普及活動に取り組むような制度設計とすべきではないか。
  • 早期の自立を促すため、交付額の抑制・補助形式の導入・継続指定は2期までとするなど、採択基準の厳格化・指定期間終了後の自走化等に向けた取組方針が明確である学校に限定といった見直しを行うべきではないか。
  • より効率的な調達となるよう、調達ルールを厳格化すること・受益者負担を求める補助形式を導入することを検討すべきではないか。

これを受けて開かれたのが「スーパーサイエンスハイスクールSSH)支援事業の今後の方向性等に関する有識者会議 (第二次)」であり、それによって生まれたのが先ほど挙げた「認定枠の創設」などの新たな取り組みである。


ここで注目したいのが、「自走化」というキーワードだ。

そもそも SSH 事業の趣旨というのは、冒頭で示した通り「先進的な理数科教育を行って将来国際的に活躍し得る科学技術人材等の育成を図る」ことなのだが、最近では「有力な科学技術人材を育成するためのシステムを全国に先駆けて開発し、全国的に展開すること」が求められるようになってきたようだ。

つまり、 SSH 指定校というのは、いわば次世代の教育システムの実験台であり、もしうまくいけば全国に布教させていくためのサンプルにしよう、ということである。


ただ、サンプルを全国に布教させていく過程で、いつまでもサンプル自体にお金を掛け続けられるか、と言われれば答えは No である。資金援助にはやはり限界が存在するのだ。そこで問われるのが、「長年の努力により成功に至った各々の SSH 事業をどのように (金銭的) 支援なしで継続させていく (= 自走) か」である。

管理機関が大学であることが多い国立あるいは私立の学校であれば外部資金獲得のパイプも豊富であるだろうが、公立の学校は外部資金をどのように獲得していくかがかなりネックとなりそう。

報告書では自走化に向けた支援として、

  • 国・管理機関が主導して SSH 指定校で活用できる外部資金に関する情報の集約や、外部資金を有効に活用している事例の発信を行うといった環境整備を行う。
  • 大学・研究機関等の設備の共用・借用により研究内容の高度化と経費執行の効率化を図る → 国や管理機関が、大学・研究機関側に対して共用に係る仕組みや手続きの整備、及び連絡調整の役割を果たすことが重要

といった点が挙げられていた。

戸山高校のケース

最後に、Ⅳ期指定を終えて経過措置に移行した戸山高校SSH 活動の取り組みの現状について、同校の研究開発実施報告書と在籍当時の印象からまとめておく。同校の SSH 活動の概要とこれまでの取り組みは、ここでは割愛するので興味がある方はこちらを参照のこと。

www.metro.ed.jp

正直Ⅴ期指定を狙えるのか?

戸山高校では第Ⅳ期指定時の開発研究課題を「世界を舞台に SDGs を実現に導くグローバルサイエンスリーダーを育てる教育課程の開発と国際都市 TOKYO での拠点の形成」としている。Ⅴ期指定を目指すとなるとこのテーマをさらに発展させていくことになるわけだが、国際交流や外部機関との連携、校内体制や成果の対外的発信といった部分でもう少し改善が必要。

また、認定枠を狙うにしても、資金援助はなく SSH という「看板」だけになるので、自走化という面で負担は大きい。運営委員 (評価機関) からは、Ⅳ期終了後立て続けに次を狙うのではなく、時間をかけて準備じっくり考えられる経過措置がよいのではないかとのこと。


このことを踏まえてか、令和6年度からは2年間の経過措置へ移行ということになった。今後戸山高校がⅤ期指定あるいは認定枠の指定に向けてどのように動いていくのかが焦点になりそう。

SSⅢを履修する生徒数が極めて少ない

SSⅢというのは、通常の戸山の SSH クラスの生徒が履修する SSⅠ, Ⅱに加えて、3年次に希望すれば履修が可能な SSH の授業である。ただ、授業といっても、自身の研究の内容をさらに深めて、外部の発表会で発信していくという活動がメインとなるようだ。


これについては、進学のことを考えるとやはり仕方がない部分が大きいと思う。最初はやる気がある生徒でも、継続的な研究の進捗を2年間も出し続けていくのは難しい。さらに、3年生になり大学受験の準備が本格的になってくると、正直研究をやっている暇がないというのが実情だ。

SSⅢを履修して、2年間の研究内容をさらに深め外部で発表の機会を多く得ることで、総合型選抜で有利になるケースはもちろんあると思うが、それは SSⅠ, Ⅱの時点で相当に優れた出来に仕上がっている場合に限られるのではないか。


SSH 活動をもっと続けたい」という意欲があるのは素晴らしいことだし、自分もこの思いはあったのだが、周りと比べてずば抜けた才能 (これは学業の成績や大会等での実績に限らず、本能的な何か (頭が切れるというのか、IQ的なもの?) も含む) がない限り、総合型選抜を突破するのは難しいと思う (先輩方の成功例をほとんど聞かない) 。現実的なことを考えると、ほとんどの生徒は3年生に上がるタイミングで受験にシフトせざるを得ない。まあ自分はそのような試験に挑戦すらしたことがないので、傍から見た想像の範囲になってしまうのだが...

とはいえ、 SSⅢの履修者は毎年じわじわと増えてきているらしいので、これからの成功事例に期待したい。

学校全体での SSH の取り組み

Ⅴ期指定ともなると、重視されるのが SSH を実施していく上での校内の体制である。理数科の教員だけでなく、国語科や英語科、地理歴史・公民科、芸術科といった文系科目を担当する教員も SSH の活動に携わっていくことが重要になる。

一般クラスの1年生向けに展開される「知の探究Ⅰ」では、 TT (チーム・ティーチング) 制を導入し、2年生向けの「知の探究Ⅱ」ではすべての教科の教員が担当することによって、令和4年度までに過半数の教員が同教科に携わった経験を持つことになった。教員の入れ替わりが頻繁に起きる中で、 SSH 活動の実態や目的を共有し、受け継いでいくことが課題となる。

個人的には、 発表会に限らず日々の SSH の授業の中で、教師側から研究内容に関してもっとツッコんでほしかった感はある。なんでもかんでも教師に聞いていては研究活動にならないのは当たり前だし、行き過ぎたツッコミ (圧迫面接みたいな) は生徒への負担になる可能性もある。ましてや専門的な内容になると教師側も詳しい知識を持っていない場合もあるのでなかなか塩梅が難しいのだが、他人からの客観的な意見で生徒自身が気づかされる点も多くあると思う。

TSS で魅せる戸山の独自性

戸山高校は毎年、「Toyama Science Symposium (TSS)」という研究発表会を主催している。この発表会では学内に限らず、他校の生徒 (県外からも) も戸山を訪れて、ポスターや口頭での発表を行う。私も2年次には英語で口頭発表を行った。

TSS は戸山の SSH 生にとっては1年の集大成的な位置づけなので、それなりにのレベルも高い。また、基本的な運営 (会場設営・当日の進行など) は生徒の手によって行われている。

「生徒が主体となった雰囲気づくり」という点は SSH 運営委員からも評価が高いようだ。このような大規模なイベントを開催することにおいて、「戸山の TSS の独自性をどう提供できるか」が焦点になりそう。生徒のプレゼンテーション能力を見たり、生徒間・生徒とメンター間で探索的な会話をして深い学びにつなげたりするといった雰囲気が作れていけば、Ⅴ期の申請にあたって有用な材料となるとのこと。

「発表会」と言いつつも別にカッコつける必要はなく、もっとカジュアルな感じで大学の先生やメンターとかかわる機会を作るべきだ (戸山高校が主催する女子向けの発表会 SWR にはそのような場が存在する) との意見もあった。

専門的な知識をもつメンターの方との関わりは、高校生とはいえなかなか自分から積極的に築いていくのは難しいと思う。私自身も他県での発表会で、ある大学教授の方が私の研究内容に興味を持っていただき、そこからの立ち話で様々な知見を得ることができたという経験があった。このような偶然の出会いを増やしていくことで、生徒の研究活動に深みを持たせられると考える。

おわりに

ということでこの記事では、文部科学省が行う SSH 事業の概要と現在の状況、そして20年の実施によって見えてきた課題についてまとめてみた。

今私が大学で情報系に進んでいるのは 戸山での SSH 活動によるところも大きいので、今後の SSH 事業全体の動きと戸山高校SSH 活動には期待したいです。

参考資料